「ついてきたって面倒なだけなのに」
「俺は湊人と一緒にいられるだけで楽しいんだよー」
「やめてよ気持ち悪い」
「うっわコイツ言いやがった……!」
ケラケラと、ふたりで笑い合う。正直に言おう。俺はね、こうやってユキと過ごす時間が本当に楽しかったんだよ。
そんなこと、本人に言いたくないし今さら言えるような関係ではないけれど。本当に、笑い合う時間が好きだった。
──ぴた、と、不意にユキが廊下で足を止めた。
「なんか、声聞こえね……?」
「……?」
確かに、教室から声が聞こえる。まさかまだ誰か残ってるんだろうか。下校時刻まではあと10分程度あるから、ありえない話ではないけれど。
「ねー、奈津美(なつみ)。
あんたさー、告白しないの?」
聞こえてきた内容が内容だったから、俺もユキも容易に教室には入れなかった。唐突に始まった話題だから、あとすこし早ければ入れただろうに。
「こ、告白って、だれに……?」
「決まってるでしょ、湊人くんよ」



