【side湊人】



──とある日、DECIDE幹部室。



「そういえば、みんなは彼女とかいないの……?」



我らが愛しのお姫様は、CHESSという巨大な連合を背負う男の腕の中で、唐突に口を開いた。



……雅、邪魔なんだけど。



「彼女、ねぇ。

俺はそういう堅苦しいの嫌いなんだよ~」



ゆるい口調で、スマホから視線をあげた一薫が短くそう告げる。それに対して「一薫は一薫だね」と千夜ちゃんは笑ってみせた。




「んー、僕は人並みに付き合ったことあるけどぉ、DECIDEの幹部として恋愛にうつつを抜かすような余裕はないって言うかぁ、」



ヒナが、ちらっと雅に視線を向けた。うん、言いたいことはよくわかるよ。連合を背負ってトップに立ってるはずの男が1番恋愛の渦中にいるもんね。



というか、千夜ちゃんの首筋に顔うずめたりするのココでやらないでくれるかな?イチャイチャされると気になるでしょ。



「一騎は?」



「……好きな女ならいる」



「えっ、ほんとに……!?」



きらきらと顔を輝かせる鈍感なお姫様。俺もヒナも一薫も、それが〝誰〟なのか、理解しているから。