「千夜。帰るぞ」



「うん……っ」



あとで、ありがとうってちゃんと乃花にお礼を言わなくちゃ。私が裏切り者だと言われた次の日。



乃花は、言ってたじゃないか。



私が裏切っても、自分の親友だってことに変わりはない。って。



あの時は裏切られたショックと、乃花に対する怒りで都合がいい話だと思ったけど。



──私にとっても、乃花はそういう存在で。たとえ裏切られたんだとしても、私が乃花を好きなことに変わりはなくて。




「雅、お願いがあるんだけど……」



いつか交わした、ママとの約束。それを口にすれば雅は「わかった」と言ってくれて。



乃花にもらったプレゼントをぎゅっと抱きしめて、彼らと倉庫へ戻る。



「ああ、そういえば」



その帰り道、信号で立ち止まったとき、何かを思い出したように雅が口を開いたと思うと。



「これ、やるよ。

遅くなったけど、誕生日おめでとう」



そう言った雅を筆頭に、みんな「おめでとう」と言ってくれて。16年間で1番幸せな誕生日だと、差し出された雅の手を握り返しながら笑ってみせた。