「乃花……」



押し付けられた袋の中身を見た瞬間、じわりと涙が滲んだ。ああ、もう。どうして。



あの日の会話が、頭の中で鮮明に流れ出す。



『乃花、お誕生日おめでとう』



『ありがと、千夜。開けていい?』



『うん、もちろんっ!』



『……これ、』




乃花に裏切られるほんの少し前。彼女の誕生日に渡したプレゼントは、可愛らしい灰色に白の水玉模様のマフラーだった。



『乃花、この間どこかでマフラーなくしちゃったって言ってたから』



『ありがとう、千夜。すっごく嬉しい』



『えへへ、喜んでもらえてよかった。

ピンクもあってすっごく可愛かったから色違いで買おうと思ったんだけど、残念ながら若干お小遣い足りなくて』



また今度貯めて買おう、と言った私に、彼女はふわりと微笑んでみせた。



『じゃあ、私が千夜の誕生日にそのマフラー買ってあげる』



『え?』