「雅は、好きな人……いるの?」
気がつけば口を開いていて。
彼は、「ん?」と首をかしげたあと。
「……いる。誰にも渡したくねぇヤツ」
うん、知ってたけど。
だけどやっぱり……ショック、だなぁ。
なんて、ちょっぴり他人事に考えてしまう。
「好きな人、いるなら……
ほかの子とお出かけするのは良くないよ」
誘ったのは、私の方だけど。
「それに、こうやって女の子に親しくするのも。好きな人に誤解されちゃうよ」
「千夜」
「じゃあ、私そろそろ入るね。
土曜日……やっぱり、いいや」
「千夜、聞けって」
腕を掴まれて、逃げられない。
いや、私が逃げなかったんだ。