家に入るのが、なんだか惜しくて。
「……どうした?」
「う、ううん、なんでも──」
「千夜」
言いかけた言葉は、彼の顔を見て消える。
真剣な瞳は、いつだって私を離してはくれない。
「ちょっと……さみしくなった」
でも、そばにいたいなんて言えない。
だから私は、嘘をつくしかないんだ。
「今度、碧にもどったら……
もう、私はみんなのそばにいられないね」
梓真が今も私を想ってくれているのは、みんながわかったこと。
私は姫に戻れるし、梓真が何を言ったのか、女の子たちの嫌がらせは気がつけばなくなっていた。
それでも、まだ妬むような視線は耐えないし、呼び出されることもあるけど。
碧の誰かが、私が呼び出されてるのを見かけると、下っ端とか関係なく助けてくれるようにもなった。



