「そばにいたいなら、」
「っ、うん」
「ときには素直になった方がいい」
「でもっ、」
「千夜。俺と識音は、お互いのことを想いすぎたから1回すれ違ったんだよ」
嗚咽で言葉が出なくなったと思えば、優しくパパが私をなだめる。
「でも、そのあと識音が素直になったから、いまもこうやってそばにいられる」
私の涙を拭うパパの左手。
薬指には、輝きが褪せることのない指輪。
「自分の気持ちに正直になればいい。
どうせ離れなるんだったら、思い切って打ち明けてもいいんじゃないか?」
それを聞いた瞬間。
驚くほど、心の中が軽くなった気がした。
……そ、っか。そうだよね。
何を深く考えてたんだ、私。
もうすぐ、離れるんだから……。



