わがままにも、程がある。
唇を噛み締めても涙はあふれてきて。
カチャ、と。
リビングの扉が開いた音に、はっと涙を拭って立ち上がる。
「ぱ、パパ?どうしたの?」
「識音が水飲みたいって言ったから、取りに来た」
「あ、そうなんだ」
冷蔵庫にパタパタと近づいて、ミネラルウォーターの入ったペットボトルを渡した。
……と、同時に。
「何かあったか?」
声だけで優しく包まれたような気がして、
我慢できずに涙があふれてしまった。
パパのこと、困らせちゃう……。
そう思うのに、涙だけは止まってくれなくて。
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