誰?


ナディアは部屋に気を取られ、自分が今どんな状況にあるのかということを完璧忘れていた。


手首と足首を縄で縛られ、声を出せないように口を布で覆われている。


…誘拐?


鉄格子が嵌められた窓から外を見ると、明かり一つ見えず、あたりが暗闇に包まれていることがわかる。

つまりここは街の中ではなく人里離れたどこかであるという可能性が高い。


冷静に現在の状況を把握すると、部屋の唯一の入り口である扉を見た。


敵は何人かしら…。
私一人で倒すとしたら二、三人が限界ね。


マンスール帝国の皇女であるナディアは幼い頃から命を狙われることがしばしばあった。
刺客が宮殿に忍び込み、剣で切りかかられそうになったこともある。

そのため皇女でありながら剣術を嗜んで来たのだ。