そしてこの予言には続きがある。


『ーーこの災いを収めしものに
三国を統べる「翡翠の王冠」を授け賜わん』


翡翠の王冠ーー三国徴蓋史に出てくる三国を統べる覇王の王冠。

この王冠を得たものが三国の皇帝たちの頂点に立つ。


この言い伝えによって、三国は昔から対立してきた。

そしてどの皇帝も、この言い伝えが現実のものとなる時を待ち続けて来たのだ。


「婆、災いとは翡翠の王冠を巡る争いのことではないかしら…。
私思うの。堕天使・ハサンが災いの元ではなくて、人々の権力への欲望こそが災いの元だと。」


ナディアはこの言い伝えを聞いた時からずっと違和感を感じていた。


皆はこの言い伝えを聞き、ハサンこそが災いの元凶であると思い込んでいるが、そうではなくてハサンが現れることで翡翠の王冠が守られるのだと。

ナディアは言い伝えを聞きそう解釈していた。


なぜかは分からないが、ハサンは悪者でないような気がしてならなかったのだ。