ーーこのマンスール帝国には古くから伝わる言い伝えがある。


『陽明下る頃

荒野の東の空に

神に背きし堕天使現る

して御身現るとき

大空(たいくう)は裂け

三国に災いが齎(もたら)されるであろう…

そは、神のみぞ知るところ』



太陽が最も明るい日の夕方。

カーディル荒野の東の空に
太陽神・マリクに背き天界を追いやられた堕天使・ハサンが、天空を引き裂いて下界に逃げて来る。

そしてその堕天使・ハサンによって、砂漠の三つの強国〈マンスール帝国〉〈ジャーミアン帝国〉〈アル=ムルク帝国〉に災いが齎(もたら)されるというものだ。


これは前述の三国の子どもたちが幼い頃から言い聞かされる、『三国徴蓋史』(さんごくちょうがいし)という三つの国に跨って語られる神話に書かれているものだ。