やっと長ったらしい授業が終わり、あたしは教室を出た。

今日お姉ちゃん宛てにもらったラブレターは、朝のヘタレ野郎を合わせて、全部で10通。

よくもまあこんなに皆書いたものだ、と感心してしまうほどだ。




「夏月!」



大勢の男子生徒に囲まれたお姉ちゃんが、満面の笑みであたしを手招きしている。

一方の男子は、「何だもう来たのか」みたいな目線を向けてくる。

うるさい。

あたしがいつ帰るとか、アンタたちに関係ないでしょ。

何でそんな目で見られないといけないのよ。




「ほら早く帰りましょう?」

「うん」




あたしたちは足早に男子たちから離れる。

学校が見えなくなった頃、お姉ちゃんが溜息をついた。

…また、か。





「夏月、今日は何通?」

「10通」



あたしは鞄の中から、ラブレターを渡す。

どれも可愛いピンク色の封筒だ。

だけど、お姉ちゃんはピンクなど女の子らしいものは好きではない。

だから髪につける髪飾りも、絶対ピンクなどは選ばないこと、男子は知らないのかしら。




「夏月、代わりよろしくね」





来たよ。

断っても無駄なこと知っているので、あたしは頷いた。