鞄を持って、電気を落とすと、美術室を出た。


相変わらず続くグラウンドでのお祭り騒ぎを横目に、わざと大回りして、できるだけ群衆に近づかないで済むコースを通って校庭の隅へ向かう。


そこは、ゴミ捨て場。


学祭で出た大量のゴミが積み上げられてある。



鞄の中からスケッチブックを取り出した。


手に取った瞬間、また涙が溢れてきた。


シィ君を何枚も描いたあのスケッチブック。

わたし達がつきあうきっかけにもなったもの。

ついこの間までは、宝物のように大事にしていた。


だけど、もう終わりにしなきゃいけない。

最後に一度だけ、それをギュっと抱きしめた……。

叶わなかったわたしの想いをせめてなぐさめてあげたかった。


それから……


そっとゴミの山の間に入れた。


もうお祭りは終わり。


明日からはまた当たり前の日常が続く。


キンモクセイの香りがどこからか漂ってきた。

冬の気配すら感じさせるような冷たい風が頬を刺激して、自然と背筋が伸びる。


わたしは前を向いて歩き出した。