「花の香り、香水じゃないですよね。」 「香水?では…………ないでふ。」 鼻をすすって顔を上げようとするけど、 顔があげられない。 綾瀬さんが抱きしめるみたいに頭から 手を離してくれなかったから。 心臓がドキドキし出す。 「あ、あの。大丈夫ですから。手を…… 離して下さい。涙は止まりました。 ……鼻水も、」 「………。」 「あの。大丈夫です、綾瀬さん?」 ………… ? 私は目をつむり少し黙った。 ゆっくり心臓の音がする。 綾瀬さんは少し早い。呼吸する音が微かに聞こえる。