そして、卒業の日。
瀬川はもうすでにタケから第二ボタンをもらったようで、ルンルンの顔をしていた。
『良之は由莉にやらないの?』
卒業式の定番、でも彼女はあまり興味ないのか、今のところ欲しいとは言ってこない。
『…うん、特に言われてないから』
俺がそう答えると、守は俺の制服の第二ボタンを無理に外そうとする。
『え…守…?』
俺が戸惑っていると、守は無理矢理ボタンを取り、
『鈍感、由莉だって欲しいと思ってるよ、これ』
そう言って、彼女のもとへと第二ボタンを持って行ってしまった。
『由莉』
呼ばれた彼女は振り向き、
『ほら、良之の第二ボタン』
そう言って、彼女に俺の第二ボタンを手渡した。
『…え…』
彼女は第二ボタンをみつめ、そして俺の方に視線を変えた。
『な…中原くん、これ…』
俺が彼女の方へと歩み寄ると、
『これ…もらってもいいの?』
そう問いかけてきた。
『…うん…俺なんかのでよければ…だけど』
『中原くんのがいい』
彼女はそう言ってにっこりと笑った。
『ありがとう、大事にするね』
こんなボタン一つで、こんなに喜ぶ彼女が見れるなんて。
俺こそ得した気分になる。
『ずっと、卒業式の時は中原くんの第二ボタンが欲しいなって思ってたんだ』
『私の夢、叶っちゃった』
『本当に由莉は良之だけだよな…』
そんな彼女の言葉たちを聞いて、守はそう感想を呟く。
『…うん、だって中原くんのことが大好きだから』
この言葉には俺も心打たれた。
本当に照れくさいことばかり。
彼女はそういうこと普通に言うし、当然のように気持ちをぶつけてくる。
でも、それを見たり、聴いたり、感じたり、俺はいつも幸せをもらってるような気がする。
どうか、今の彼女がずっと俺の傍にいてくれますように。
俺はそう、ずっと願うよ。
『俺も西山のこと好きだよ』
もう俺たちに嘘はいらない。
自分を守るための嘘はいらない。
これからは二人の想いが続くように、俺の願いが叶うように。
君を想ってることを、俺が伝えていくよ。
俺の一番大切な人。
西山 由莉さん…。

