俺の言葉に加藤は後ろの席に振り向く。
加藤。
本当はさ、俺、後悔してるんだ…。
誰にも言えないけど、心の中で加藤に呼びかけるのは、許されるよな…?
本当は席を替わったのも、彼女にあんなことを言ってしまったのも、全部後悔し始めてる。
加藤と話すのに、後ろに振り向くと、いつもその視線の先に見える彼女の姿。
それを見るたびに、ふと視線に入るたびに、その度に心が痛くなる。
今なら訂正してもいいですか?
今更だけど、やっぱり他の男を見るな、聞くな、触れさせるな…
でも、言えない、言えるわけがない。
『そういう決心って、鈍ったりしねぇの?』
今がそう。
でも。
『…うん』
『良之ってさ、そういうとこすごいよな?
俺だったら決心鈍って、何度も振り返りそうだけどな』
すごいことなんて一つもない。
俺だって、鈍って、何度も振り返ってる、時間が戻って欲しいと願ってる。
『…うん』
俺が相槌を打つと、加藤は溜息をついた。
『どうした?』
『お前さ、もっと自分に素直になった方がいいぞ?』
『…え…?』
『お前の顔、バレバレ。
俺にはもっと素直になりたい、思ってるままに行動したいって、そんな感じに見えるんだけどな』
『…加藤…』
『俺だけじゃない。
タケもすげぇー心配してるよ、お前のことも守のことも』
何も言えなくなった。
加藤の言葉に、俺は二人のことをこんなにも心配させてたんだな…と深く実感した。
決心を鈍らせちゃいけない、そう言い聞かせては振り返って、後悔して、白紙にしたくて、でも出来なくて。
だから強がって、なんでもない振りをしていなければいけないと思っていた。
でも、それが加藤とタケのこと…
『加藤…わりぃ…。
加藤には俺の本音を聞いてもらってもいい?』
ダサいかもしれない。
今まで散々強がって、なんでもない振りしてたくせに。
それなのに、今更こんなこと言うとか…
『タケも聞いてやりたいって言ってたぞ』
ごめん…タケも加藤も。
ごめん。

