『………』


何も言わない彼女。


『もしかして…菅原に告られた…?』


瀬川の遠慮がちな問いかけに、彼女は顔を上げることもなく頷いた。



『…そっか…それで、どうしたの?』


『……好きなひとがいるからごめんなさいって……』


『…そっか…』


『でも……その好きな人とは幸せになれないって…』

彼女の言葉に、全員が“え?”と聞き返した。



『どういうこと?』

タケがそう問いかけると、

『私がどんなに想っても届かないって……』


『…私を……好きになってはくれないって……』



『…由莉、そんなことないよ?
 私だってタケと無理って思ってたけど今はこんな風に』


瀬川のその言葉を遮るように、彼女は口を開いた。



『…私じゃ……私じゃ…ダメですか……?』


頼りないその声。


『私のことは……好きに…なってもらえませんか……?』


そう言って、彼女は迷わず俺の顔を見つめた。



『……私じゃ、あなたの心の中には入れませんか…?』

真っ直ぐな目。

でも涙がいくつもいくつも溢れて…



『中原くん…私は中原くんの心に自然に入り込むなんてこと出来ないですか…?』



答えを求められてる…

もう諦めようと、いや、もう諦めたつもりでいた俺に、彼女は何度も口にする。




『………』



『…ごめん、西山さんには守が合ってると思うよ』


俺の言葉に彼女の両目からまた涙が溢れた。



『…どうして……?』


『どうして……そんなこと…言うの………?』




だって、そう思うからだよ……?



『守はいい奴だよ?
 面白くて、一緒にいると楽しくて。
 西山さんなら一番知ってると思ってたよ』


俺の言葉に彼女が首を傾げる。


『守から電話してるって聞いてた。
 アイツと付き合ったら絶対楽しいから。
 今なら訂正出来ると思うし、アイツと幸せになりなよ……』