教室のドアまで来て、守が彼女を慰めてる姿が視界に入る。
本当は俺がしたい…
“違うんだよ”って優しく誤解を解きたい。
“嘘だよ”ってそう言って安心させてあげたい。
でも、
でも、俺にはできない。
俺は、この様子を見てるだけしかできない。
二人がこうやって距離を縮めていく様子しか見れない…
“どうして苦しい顔をしてるの”
瀬川に尋ねられた言葉が頭を過ぎる。
苦しいよ…
見てるだけしか、聞いてるだけしかできない恋は辛いから。
二人が少しずつ距離を縮めていく姿しか見れないから、聞けないから。
守を裏切る強さもなければ、守を裏切って、彼女に“好き”と伝える強さもない。
俺はしばらく教室に入れなかった。
教室のドアに背を預け、何もない無機質な天井を見つめる。
『…さっきは、ごめん…』
振り向くと瀬川が立っていた。
『………』
何も答えない俺に、瀬川を教室にいる守と彼女の姿に視線を向ける。
『…あれが原因?』
その質問にも俺は答えない。
『このドアを隔てたとこにいるんだもんね…答えられないか…』
瀬川は俺の横に来ると、俺と同じ姿勢をとった。
『中原も苦しいね…』
瀬川は小さな声で、そう呟いた。
『でもさ…由莉は繊細な子だからさ…
あたしは由莉の友達だし、あの子が幸せになってくれることだけ願ってる。
だから、あの子を惑わすようなことはしないであげて?
あの子が好きならそういう態度で接してあげて?
もしそれを選べないなら…辛いかもしれないけど忘れさせてあげて?』
友達…
瀬川の言うことは正しい。
俺の曖昧さは、このまま続けていれば、彼女をもっと傷つける…
『…終わらせるよ』
俺はそう答えた。
最初にリセットするんだ。
彼女と過ごした時間はたったの三日。
だから、止めれる。
『……そっか…あたしは由莉のケアをするから…』
瀬川の言葉を聞いて、俺は静かに教室に入る。
そして遅れて瀬川も教室に入った。

