帰り際に、


「あ、そうそう、僕のことは幸坂さんじゃなくてケイって呼んで!明日ね、ナナちゃん」


幸坂さんはそう言うと、ラッキーと公園を後にした。


「はぁーーっ……」


今日はドラマになりそうなくらいに目まぐるしくて、


濃厚すぎる1日だった。


数分前の出来事はその最たるもので、


強烈さのあまり、今朝、痴漢に遭ったショックなんて頭の中からすっかり抜け落ちていた。


幸坂さん、いや、ケイくん(いきなり呼び捨ては恐れ多いからくん付けに……。)は、わたしの心をガッチリ掴んで離してくれそうにない。


なんて、勝手に思い込んでいるわたしは相当イタイ子なのかもしれない。


これも、恋するがゆえ。


夜になってケイくんからメールが届いた。


『明日の朝は、8時に北口改札前でいい?』


絵文字も何もないものなのに、嬉しくて保護メールにしてしまったわたし。


もうイタイ子とでも何とでも言ってやってください。



.