「遅ぇな」

つぶやいた雅哉に、駿が小さな声で笑った。

「んだよ」
不機嫌そうな雅哉の声。

「雅哉、お前怖いんだろ?」

ちゃかすように声が聞こえる。

お化け屋敷の中で、もう10分以上も待っていた。

廃墟のお化け屋敷なんてこの上なくイヤな場所だが、幸いこの空間には5人の人間がいる。

「ウソ、雅哉怖いんだ?」

七海の声。

それに続いて、そばにいるのだろう陽菜の笑い声。

「らしくないですね」

反対側からは紗栄子の声がする。

「怖くねぇよ。遅い、って言っただけだろうが」

舌打ちをした雅哉がそう言う。