【犯す】
この言葉に、彼は「え……」と小さく声を漏らした。


その表情は驚きと、悲しみが入り混じってるような気がした。



「犯すって……玲奈、昨日、無理矢理されたのか?なぁ、本当に……?」


両肩を掴んできて、彼は「本当に?」と何度も繰り返した。



「ほ、本当よ……。昔使ってた、密会の場所でね」


恐怖心を必死に抑えて、嫌味を込めてそう言い放った。

「そう」と私の肩から手を離して、彼は頭を抱えた。



「玲奈、誤解してるんでしょ?俺が、犯したって……」


「誤解じゃなくて、そうなんでしょ?」


「違う。俺は、そんな酷い事してない。俺はただ玲奈が本当に好きで……」


「もうっ!!いい加減にしてよ!!そうやってとぼけ続けるのはやめて!?頼むから、自分のした事を認めて……私に一切、近づいてこないで」



彼は返事もせず、俯いてしまった。