卒業式。
中学最後の日。

周りには泣いている同級生。
告白してる奴や。
抱き合う奴。
肩を組んでる奴等。
別れを惜しみ思い思いに涙してる。

何もここで終わりじゃない。
四月からは新しい生活が始まる。
学ランがブレザーに変わるだけ。
それなのに。



「…何が悲しくて泣いてんだよ」

「アンタはもっと感傷に浸りなさい!」



冷たく言えば目が赤いお袋に殴られた。
そして何度もシャッターを切る親父に白けて、片手でレンズを塞いでやった。

卒業証書の筒を貰っても涙は出てこない。
中学を卒業しても、変わらない。
高校でもアイツらは付き纏う。



「蓮!写真撮ろう!」



泣き腫らした目で駆け寄ってくる日莉。



「ぐす…っ」

「いつまで泣いてるの?いい加減泣き止んでよ」



泣き止まない乙樹に、迷惑そうな芽生。

二人とも学ランのボタンは全てない。



「蓮、卒業おめでとう!」



日莉から泣き笑いで言われた。

学校が白鴎高校でなければこの卒業式も清々しかったに違いない。
心の底から祝えない。

“さようなら”
そう言われるはずだったんだ。
だが何故か。



「これからもよろしくね!」



三年間、宜しくする羽目になった。