「カロッサ、お前子供いるのか」

 ぽつり、と呟かれたそれには、戸惑いと失望と怒り…という感情が混ざっていた。

 「いた、という表現が正しい。第一私は子の名すら付けておらぬ。覚えているのは……私と同じく病にかかったような青白い肌ということだけ」

 「お前の"今まで"を見たから事情は理解しているが……きついな」

 「…………」

 「公爵を……愛していたのか?」

 「ハッ。何を言う。愛など何処にも存在せぬ。あの男にとっても私などどうでもよかったであろう。権力を握りたいがために私と契りを結んだことなど一目瞭然」

 「……あいつと、何回した?」

 「何を」

 「セックス」

 「セックス…?何だそれは」

 「性交渉」

 「一回だが。たった一回しただけで子を孕むとは、運が良いとは思わぬか?」




 その言葉を聞いて、レイは目を怒りの色に染める。

 ギロリと私を睨んだ。

 「お前は…自分を大事にしようとは…思わねぇのか?」

 「"己より民"。当然だと考えるが」

 レイは私を睨みつけるのをやめ、悲しそうに目を伏せた。

 「カロッサはもう女帝じゃねえ。将軍でもねえ。今はただの女だ」

 「だからどうした」

 「ただの女」という言葉を聞いて、沸々と怒りが湧いてくる。