全身の血液が脈打つのがわかる。

 「裕貴、次のクラブはここから近い。歩いて一人で行け。迎えは寄越す」

 裕貴は俺の言葉を聞いて苦笑いした。

 「…はいはい、わかったよ〜。俺一応怜の護衛なんだけどー。まあ崎本いるし大丈夫か。人使い荒いね全くもう…この女を連れて帰る気?変な気起こさないでよね~」

 「俺は一人でも大丈夫だ。それより、変な気だと?」

 「なんでもないよー。……まあ、連れてでも帰らないとこの女、死ぬね」

 「ああ…」

 放っておいたら、この綺麗な格好のまま朽ち果ててしまいそうだ。

 でも、死にそうだから連れて帰るわけではない。
 死にそうな奴なんて世間でどこにでもいる。
 赤の他人が死のうが何しようが俺はどうでもいい。

 だが、この女だけには死んでほしくなかった。



 俺はこの女に惚れたから、連れて帰るんだ。

 ものの数秒で俺は自分の感情を理解した。
 恋だの愛だのと、馬鹿にしていた自分はもういない。


 こんな感情を抱いたことがなかった。
 だから、ただ、この感情が『愛』なのだと、忘れないように胸に刻みつけた。