願い事を一つだけ。【短編】

唐突に出された名前にびくりと肩が揺れる。


今となっては心臓に悪い名前。


「青葉?あぁ…サッカーのチームで後輩だった奴だけど」


「そう、やっぱりー。あのえんじ色のユニフォームのとこよね?」


何がやっぱりなのか分からないまま話が進んでいく。

咲さんがこちらに向き直った。


「菖蒲さん。その彼女、誰か分かったわよ」


「え…?」


「テニスかバドミントン部に入ってる、越智 瞳。どんな子かは知らないけど、聞いたことあるわ。カスクズバカ青葉くんは確かキーパーよね」


「…ひぃちゃん?」


ひぃちゃんが、青葉の彼女───。


明るくて優しい、アイドル好きでミーハーな感じのチームメイト。


ペアにはなったことが無かったが、別に仲が悪い訳でもなかった。


『菖蒲、見てー』


『どしたぁ菖蒲』


あの笑顔も言葉も、何故か────憎らしく思えてくる。


もう、いい。


もういい。青葉も諦める、その代わり。


黒い感情が芽生えた。




「青葉が私についた嘘を、皆に暴露してやります」


咲さんは私をじっと見つめたまま何も言わない。


「私は…明るい真面目で、優しい性格というポジションに居ます。だから、同情票なんて私の総取りですよね」


復讐、これが一番ふさわしい。