願い事を一つだけ。【短編】

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「そっか、じゃあ菊乃さんとは会えたのね?良かったじゃない、わだかまり解消」


また英野家を訪れたとき、家には咲さんしか居なかった。


「はい!…それから、私今日、告白しに行くんです」

私がそう言うと、咲さんはちょっと驚いたように目を見開き、ふっと優しく笑った。


「貴女も強くなったわねー。あーんなシケた顔してたのに。頑張って、何かあったらいつでも来なさいね?」

ハイ携帯番号、とテーブルに紙が置かれる。


赤外線もあるのにな、とは言わない。


咲さんはたまに古風な言い回しや行動をすることがある。

例えば、


「ねぇねぇ菖蒲さん。ナントカっていう映画知ってる?あたし、あれみてババ泣きしちゃったわよー」


今みたいな。


「ナントカじゃ分かりませんよー咲さん」


こんなギャップが咲さんの魅力なのかも。


凜兄とはもうすぐ正式に婚約するみたいだし。


咲さんはそれもそうね、と頷いて手元のアガサ・クリスティーに視線を落とした。


あんな英語の本、よく読めるなぁ。


私は私で淹れて頂いたミントティーのカップを傾ける。

カップは無色透明のガラスで、ミントティーの綺麗なグリーンがよく映える。


派手な装飾もなく、底に小さく天使の羽が彫ってある程度。


尋常じゃないセンスの良さだ。

全て咲さんのチョイスらしい。


すると、携帯のバイブが鳴った。

メールだ。