願い事を一つだけ。【短編】

咲さんの部屋はとてつもなく綺麗だった。


彼女いわく、


「部屋が汚いと自分まで汚くなりそうじゃない」


らしい。


充分綺麗ですけど…


透明のガラスのテーブルを向かい合わせになる形で囲む。


「…で?菖蒲は何しに来たの」



姉様、ずいぶん口調が砕けたな。

自由になったからだろうな…


良かった。

私がやってきたことは、間違いじゃない…


「だーかーら!あたしが連れてきたのー」


咲さんがまたふんわり笑う。


「おい菖蒲。ここにはババアいねぇんだから戻れよ」


凜さん、いや…凜兄の声に涙腺を刺激された。


1度弱ってしまった私の涙腺は、崩壊寸前だったらしい。








「お姉、ちゃ…」


ボロボロと涙がこぼれる。

「あれれ、菖蒲っ?」


姉様の焦る顔も、涙でもう見えない。


「お姉ちゃんは、幸せだった?お家を出て咲さんと過ごした時間、幸せだった?もう泣かない?もう泣いたりしない?」



滝のように口から流れ出る質問。