願い事を一つだけ。【短編】

「菖蒲さんさ、そんな性格じゃないのに何で隠してるの?あたしに分からないとでも?」


いや…分からない以前に。

「私、咲さんの事をよく知っている訳ではありませんし…軽々しく何か言うのは失礼かと…」


咲さんがまた鬱陶しそうに、でもその美しさを壊さず笑う。


「あらそう、それくらい無邪気な感想が言えるのよね?あーもう鬱陶しいったらないわ。女子の真面目ぶりっ子見るのより馬鹿馬鹿しいこともないわよねー」



何言ってるのこの人。


何で。


「あのさぁ、あたし思うんだけど。上手じゃない猫被りって1番見苦しいのよねー。いい加減にしたら?」

知らず知らずの内に視界が曇っていく。


「何で…そんなこ「当たってんぞ、菖蒲」



私の言葉を遮って、凜さんが言った。


「お前らしくねぇ。そんな堅物、俺は知らねぇよ」


凜さん。


やめてよ。


私は自分の意思でこの私になったの。


切り捨てるのも苦しかったけど、切り捨てた方が良かったの。


無邪気な私なんて、迷惑なだけ。

素直さなんて、足手まといなだけ。