「ああ、そうですわ、翔太様!」
また思い出したように姫が振り返る。
姫の発言はいつも突然で驚かされるが、今回は特別だった。
「今夜、花蓮様をお見送りした後、わたくしの部屋にいらっしゃってくださいませんか?」
目が点になった。
時が止まったんじゃないかとさえ思うほどに、その発言は驚きだった。
「…え、俺?ですか?」
「はい、翔太様です」
翔太は明らかに驚いていて、あたしと同じようにその意図を完全に理解しきれていないようだった。
「…え、っと。由良も一緒ってことですか?」
「もちろんお2人ともご一緒にお話はしたいのですけれど。
今回は、2人きりでお話できませんか?」
少し頬を赤らめる姫がとても愛らしいのだけど、可愛らしいとだけ思っていられるほど心に余裕はなかった。
姫はきっと、翔太が好きなんじゃないかな?
好きとまでいかなくても、明らかに好意的に思っているのは伝わってくる。
痛いくらいに、伝わってくる。
翔太はなんて答えるんだろう。
姫とはいえ、女性と二人きり。それもその人の部屋で。
なんて、答えるのかな。
あたしは翔太をじっと見つめた。
翔太は困ったような顔をして、少し悩んでいた。
それから、こう答えた。
「…承知しました。お伺いします」
胸を刺されたようだった。
そんな痛みが全身を駆け巡った。



