姫は、この森も泉も、この地で生きている生命全てを、自分と同じ命だと考えている。

それは上辺だけの言葉ではなくて、心の底からそう思っているんだ。

だから、姫の言い回しはあのようになったんだろう。


「ごめんなさい、話しすぎてしまいましたわ」


姫ははっとすると悲しそうに笑ってお茶を一口含んだ。


「どうぞ忘れてくださいませ。分からないと思っていらっしゃるのでしょう。大丈夫ですわ。このような考え方、理解できないというのが普通だとちゃんと分かっていますのよ」

何でもないことだと言わんばかりに、姫は次々に言葉を紡いでいく。感情を潰したような、そんな口調で。

「…この話をすると、皆さん笑われるか分かったふりをされますの。心から分かってくださる方は今までいらっしゃいませんでしたわ。だからどうか翔太様も由良様もお気になさらないで。わたくしの独り言だと思ってどうか忘れてくださいませ」

そう目を細めて笑う。この方の笑顔は優しさに溢れていてもっと見ていたいと思ってしまうほどだったのに。

それなのに、この方の笑みがこんなに悲しく見えるなんて、思いもしなかった。

晴人さんは悲しそうに俯いて、翔太は黙っていた。あたしは思わず「あの!」と大声を出してしまった。


「すごく分かります!」

姫は驚いて目を見開き、晴人さんも翔太もはっと顔をあげた。

姫はすぐに悲しそうに笑って「無理をなさらないで」と仰った。

「お気遣い、ありがとうございます。由良様はとても優しいのですね」