ド天然!? 魔女っ子の秘密【2】

「ああ、本当に懐かしい。あんなに幼かったのに、こんな年頃の娘さんになっちゃって」

「その言い方、おばさんみたいだよ」

懐かしいと言う千沙さんに対抗しようとそう言ってみると、千沙さんは立ち上がってあたしの頬を摘まむと横に引っ張った。

「誰がおばさんですって?」

その顔はいつも通りの千沙さんだ。

いつも通り、穏やかに微笑んでいる。

それなのに、どうしてだろう。千沙さんからすごく怖いものを感じる。

その笑顔の下に絶対、何かある。


「ごめんごめんごめんなさい嘘です冗談です冗談だってば!」


早口でそう謝ると「そうよね、冗談よね」とにっこり微笑んだ。指はようやく離れた。

頬をさすっていると「あら、もうこんな時間」と腕時計を見ながら千沙さんは立ち上がった。

日付は変わり、依頼の日がやってきてしまった。


「朝、太陽が昇るころにはもう、王城かしら」


千沙さんの言葉にあたしは頷いた。


「そうだね。もうすぐ、依頼が始まる」


姫様の守護、魔物の討伐。

朝日が昇ると始まる仕事。

いつもとはいろんなことが違う依頼だけど。


「由良さんならきっと大丈夫ね」


「当然」


あたしは不敵に笑ってみせた。


「だってあたしは、"ガーネット"なんだから」


どんな不安も恐怖も全部笑い飛ばして、自分を信じる。

どんな困難だってきっと、大丈夫だ。


そう思えるような、まるで呪文のような、これはそういう言葉だ。