「でも、やりたくない、というわけではないんでしょう?」


千沙さんの問いに私は頷いた。


「やっぱり、助けを求めている人がいるなら助けたい。

あたしの力が人の役に立つなら、それがいちばん嬉しい」



この力のせいで、たくさん嫌なことがあった。


力が制御できず友達に怪我をさせてしまった。

人から距離を置かれた。

好奇の目にもさらされた。

陰口も悪口もたくさん言われた。


小さい頃からずっと人を避けて、心を許せるものなんて、家族や"ガーネット"のみんな、魔物くらいだった。

人は怖かったけれど、嫌いなわけではなかった。

力がコントロールできないで他人を傷つける自分が嫌いだった。


だけど"ガーネット"の依頼をするようになって、ようやく気づいた。


大嫌いだったこの力で、人を救うことができること。

大嫌いだったこの力で、人の役に立てること。


そこであたしはようやく自分のいる意味に気づけた。

自分にできることが見つかった。



「由良さんは本当に優しくて強いのですね」



千沙さんは目を伏せて微笑んだ。



「女神様みたい」



そんなことを言うのであたしは「違うよ」と言った。


「こんなあたしを女神様みたいなんて言ったら女神様にとても失礼だよ。っていうかあたしは魔法使いだし、女神様ではないよ?」


それを聞いた千沙さんは呆気にとられたように瞬きすると「由良さんらしい」となぜか微笑んだ。