「でもよぉ、国土結界なんて何を守っていたんだ?

今までも危機なんてなかったし、大して危険なもんなんてなかっただろ? 大学でも聞いたことねえよ」


確かに雅人の言う通りだった。

何が危険なのか、この国の人達は知らない。知る必要もなかった。

それほどこの結界の守りは強かった。


「いろいろあると思う。外国からの脅威とか、自然災害とか、

…魔界、とか」


それを聞いた雅人は「魔界?」と聞き返して笑い飛ばす。


「魔界って、それはおとぎ話だろ? そういう話は小さい時に絵本とかで読んだ記憶があるぜ。内容は、ええっと…」

「確か、悪い魔法使いは魔界に連れていかれて魔物に喰われる、だとか、魔界からやってきた魔物が街を荒らす、とかだったかしら」


美玲も顔に手を当てて、昔を思い出しているらしかった。


「そうそう! あとは、魔界には魔物よりももっと邪悪な悪魔が住んでいる、とかもあったな」

「作り話にしては、みんな知っていることよね? 小さい時は怖いと思っていたけれど」

「確かにな。作り話にしては迫力あるんだよなあ」


昔を懐かしみながら会話を弾ませる二人の会話を黙って聞いていた翔太が急に口を開いた。


「お前ら、考えてみろ。不思議に思わないか?

これが作り話なら、それを聞いてどうして『怖い』と思うだけだったんだ?」



それを聞いた美玲は「どういうこと?」と尋ねる。


「悪い、言葉がまとまらなかった。

聞きたかったのは、こういうことだ。


魔界が出てくる話で、物語の最後が『めでたし、めだたし』で終わる話を一度でも聞いたことがあるか?」