「魔法陣?」

雅人も美玲も、翔太まで首を傾げている。

あたしはポケットにしまっていた地図を取り出して広げる。美玲はそれを魔法で空中に浮かべてくれた。


「その地図…さっき見てたやつか」


雅人の問いにあたしは頷いて、説明をした。


「結界魔法には二つの種類があるのは、知ってるよね?」

「もちろんよ」と美玲は今更何を聞くのだといわんばかりの表情で詳しい説明をしてくれた。


「まずは凝固型結界魔法。戦うときには防御(シールド)として使うこともできるし、複雑な魔法陣がなくても自分の魔力だけで十分に結界を張れることができるわ。その手軽さゆえ使うことが多いけれど、強度や範囲は限られるわね」


さすがはソルテリッジでトップクラスの実力を誇っていた魔法使いだ、とその説明の詳しさに感動していると、「もう一つは、循環型結界魔法だな」とそれまで黙っていた翔太が言った。


「循環型結界魔法は、一度張った結界に次々に魔力が注がれてはその魔力がその元へと戻っていく結界のことだな。魔法陣を必要とし、凝固型に比べて強度も範囲も絶大だが、魔力の拠(より)とするものはその場から離れることができない上、莫大な魔力が必要になる」

「そういやあ、ラトセーヌにあるあのでっかい結界魔法は循環型に当てはまるのか?」


雅人の問いに翔太は「ああ」と頷いた。


「あれはラトセーヌの土地の魔力を拠としている。王城の中でも重鎮のクリスさんという人が中心となって作ったらしい」

「あれだけでっかい結界作るのにどんだけ複雑な魔法陣がいるんだよ、よく描けるな」

「強力な魔法を使うには、より精巧な魔方陣を描く必要があるわ。彼はもはや職人ね」


みんながラトセーヌの結界魔法を思い浮かべている中で、翔太が訪ねた。



「で、今更なんでこんな分かり切ったことを言うんだよ」