優しい人だと思った。
あたしのことまで喜んでくれる。
けれどあたしだったら、どうだっただろう。
姫が初めてガレットを食べれたこと、街を散策することを、心から喜んであげられたのかな。
きっと答えはノーだ。
姫の願いを叶えてあげたかったのは確かだ。
籠の中の鳥みたいな姫の、ささやかな願いを。1人の友人として。
でも、今目の前にいる彼女はあたしの大好きな人がいちばん気にかけている人でもあって。
そんなことを考えてしまったら、きっと喜んであげられない。そんな自分が醜くて嫌なのに。
こんなの、姫に八つ当たりをしているようなものだって分かってるのに。
それなのに止められなくて、そんな自分が嫌で。
黒いもやもやした感情が膨れ上がる。
「あ、見てください、由良様!」
姫はあたしの裾を掴んで引っ張る。
姫が目を輝かせた先に会ったのは雑貨屋。
耳飾りから髪飾り、ブレスレッドからペンダントまで何でも売っている、女の子には人気のお店らしい。
「すごく可愛いですね」
まるで少女のような反応をする姫に声をかけると「ええ!」と返事が返ってきた。
「こっちは天然石のブレスレッドのようですね」
あたしの声に反応した姫は「まあ、綺麗!」とその中の1つを持ち上げて目を細めた。
姫の手の上にある薄桃色の天然石は、可愛らしい姫の頬の色と同じだ。
「お嬢さん、そのブレスレッドに興味があるのかい?」
店のおばさんが姫に声をかける。
「その天然石はローズクォーツ。恋のお守りさ」