次の日、ラトセーヌでの姫のお務めはいつもより短かった。

どうやら数日おきに通常とは異なる儀式をするらしく、いつもなら夕刻までかかる務めも半日で終わるらしい。

お昼過ぎに城へ戻ってくると、籠から降りた姫があたしのもとに走ってきて言った。


「由良様!」


それからあたしの手を握ってこう言ったんだ。


「由良様、今から小鹿ありますか!」

「えっ、ええ…ありますが…」


突然のことにあたしは驚いた。

あたしと翔太の役目は、姫がラトセーヌにいるときに姫を襲う手強い魔物から守ること。姫のお務めが早く終わればともその分あたし達の仕事も早く終わる。


「でしたら!」


姫はより一層目を輝かせて言った。


「一緒に城下へ参りませんか!」


あたしは驚きのあまり目を見開いた。あたしだけじゃない、翔太も晴人さんも、周りにいた衛兵までも驚きの表情を浮かべている。


「…姫、今、何と仰りましたか」


晴人さんはゆっくり尋ねる。言葉は穏やかなのに雰囲気は穏やかではない。寧ろ恐怖さえ感じる。


「ですから、由良様と一緒に城下へ…」

「何を馬鹿なことを仰るのですか!」


ついに晴人さんは怒った。