翔太は心の底から姫を守るって思ったんだ。だから翔太の言葉は姫に届いて、翔太がすごく格好良く見えるんだ。


だけど、姫のために命をかけちゃうんだね。


あたしじゃなくて、姫のために死んでもいいって思ってるんだね。


そりゃ、依頼をこなすことは重要なことだけど。


あたしじゃないんだって、思ってしまう。


翔太が命をかけるのは、あたしじゃないんだって。


命をかけても守るって、そんな台詞、あたし言われたことないのに。



それほどまでに、翔太は姫が大事だってこと?


そう考えて胸が痛い。

どくん、どくん、と心臓は速く鼓動して、変な汗まで出てくる。


姫の前では柔らかく笑うのも、姫に抱きつかれても拒まず頭を撫でたのも全部、姫のことが好きだから?


あたしじゃなくて、姫のことが好きになってしまったの?


違うって、否定したい。

否定したいのに、否定できることが何も浮かばない。

浮かんでくることはどれも姫と出会う前のことで、その全てが確信を持って言えるものじゃない。

翔太があたしのことを好きでいてくれている証拠が、どれも不安定で明確な根拠にならない。


がらがらと心が音を立てて崩れていくようだった。

今まであったものが全て信じられなくなるみたいだった。


あたしの気持ちまで分からなくなっていくみたいだった。



ねえ、今翔太は誰が好き?

今あたしのことどう思ってる?

あたしは翔太を好きでいていいの?


けれどどれも翔太には聞けなかった。聞くだけの勇気がなかった。



ねえ、翔太。

あたしは何を信じればいいのかな?