「本当に由良様はまっすぐですわね」と姫は微笑んだ。

「貴女ほど真っ直ぐな強さを持つ人を、私は知りませんわ」


柔らかく微笑まれて、あたしは何も言えなくなってしまった。

すると黙っていたはずの翔太が「由良の意見に同感だ」と言ってくれた。

「機械のことが分かれば、その他のことにも繋がるかもしれない。聖獣が解き放たれたことと、この機械のこと、それだけじゃないと思う。もっと別の大きなことに繋がっている気がしてならない」


何か別の大きなこと。

確かに胸はざわついていた。何かがあると感じているような、妙な違和感。

そう、それは嵐の前のような、そんな感覚だ。


「別の大きなこと、ですか。何も危険なことは起きないとよいのですが」


姫は俯いてそう呟かれる。

それは祈りのようでもあったし、あてのない不安のようでもあった。


「大丈夫ですよ」


暗い空気を吹き飛ばすように、翔太が言う。


「姫のことは必ずお守りします。この命に代えても、必ず」


その言葉は確かに心強くて、姫も「ありがとう」と笑った。その顔を見た晴人さんもほっと安心したようだった。

翔太の言葉は正しかった。

台詞も、声も、言い方も、姫に安心感を与えるには充分で完璧だった。

護るべき人に安心感を与えることは何よりも大事なことだ。依頼を遂行する身としては、完璧な対応だっただろう。

だけど、胸の辺りがざわざわしてしまった。