「に、逃げられた……」
「うわ、ダセー。ナンパ失敗」
物凄い速さで駆け出した夏鈴ちゃん。
……と言うより、逃げ出したと言う方が正解かも。
彼女の後ろ姿を見ながら、ため息をつくと、隣で朱雀がおかしそうに笑った。
「龍斗が普通校舎の女をナンパとか珍しいな。同じ学校だとめんどくさいとか言ってたのに」
「だから、ナンパじゃないって」
「じゃあなんだよ?」
「……あーあ。せっかく番号とメアドをゲットできそうだったのに」
オレの番号を教えただけで、終わっちゃったじゃねーかよ。
朱雀が来なけりゃ、交換できたのに……。
オレのつぶやきに、朱雀はハハハと笑いながらオレの背中をたたく。