おそるおそる手を伸ばしてみるけれど、躊躇して引っ込めてしまう。



『小さな事でもいいから、オレを頼ってよ』



ふと、龍斗君が言ってくれた事を思い出す。


この言葉は、本当に心強いなって思った。


昨日、汚れていたこの靴箱を綺麗にしてくれたのは、龍斗君だと思う。


でもそれをわざわざ口にせず、何事もなかったかのようにしてくれるなんて。


……嬉しくて泣きそうになった。


私を不安にさせないよう、優しい笑顔で包み込んでくれる……。


そんな彼のお荷物にはなりたくなかった。


私だって龍斗君の支えになりたい。


頼ってばかりじゃなくて、頼られるような存在に……。



「……っ」



意を決して私は、靴箱を勢いよく開けた。