これは絶対に恋じゃない




バタバタと、急いで教室を出て、靴箱が置かれている一階までたどり着くと、私はその場にうずくまってしまった。



「…っ、なに、さっきの」



未だにドキドキと、早鐘を打つ鼓動。


たぶん、私…今、顔赤い。



平静を装って、教室にいる時は笑顔なんて浮かべてたけど、内心はいっぱいいっぱいだった。



…だって、あの悠希って人、急に真剣な表情するから…。



不覚にも、カッコいい、とか思ってしまった。




「…意味わかんない」



ポツリと、呟いた言葉が誰もいない靴箱に響く。




あー、もう!気にしてもしょうがないじゃん。
御池くんも、あの人のこと女たらしとか言ってたし?きっと、さっきのも女落とすテクニックなんだよ!



自分にそう言い聞かせ、



「よし!帰ろう!」



と、気合いを入れた時。




「…っふ、はは、おもしろいねー。凛、独り言まるぎこえだから」



…え。