そんな私に、光輝はまじめな顔で、私の手をつかんで引き寄せた。


一瞬のことで驚いているうちに、目の前、超至近距離に光輝の整った顔。

葵もびっくりいた様子で見ていた。

周りにいた女子たちは悲鳴に近いような声を上げる。


でも、そんなのは私には聞こえていなくて、ただただ光輝を見つめることしかできなかった。


その距離のまま、光輝は私から目をそらさずに言う。


「俺が食いたいのは、杏奈の作ったのだ。甘いものは好きだし、くれるのはうれしいけど、俺が1番ほしいのはお前の。」


いつもより低くて、聞くだけでくらくらしそうな声。

私は、もう周りなんて気にする余裕はなくて。

倒れそうになっていた。


その様子に、光輝は自分のしていたことを自覚したらしい。

慌てて私の手を放すから、私はその場に座り込んでしまった。


『び、っくりした…。』


そう言って、顔をあげない私に、光輝はいつもの声に戻って謝る。


「悪い杏奈!もらえないって俺にとってのすごい衝撃で必死になって。」


目の前で手を合わせる光輝がなんかおかしくて、私は笑い出す。