「名前っ……!名前、教えてよ……!」



彼女は食い下がった。

普通の女じゃないのか、はたまた少数派なのか。



こういうのは、意地になるより素直に教えて解放してもらうのが一番だろう。

そう思い、名前を口にした──ら。



「……⁉︎」



彼女は俺の手をぎゅっと握って。



「“千速”くん……!私を貴方の家に置いてもらえない……?」



色褪せた世界の片隅で──運命の歯車が小さく音を立てた気がした。





「へぇ……!千速くんのお家、大きいんだね!」

「まぁ……親が結構稼いでるからな。その分帰ってこないし、好きに使っていいから」



リビングをキョロキョロと見渡す彼女を横目に、ネクタイを外す。



……はぁ、なんでこんなことに……。

思いつつ、彼女が提案した条件はとても魅力的で、断れなかった。