『引き出しのお金は自由に使っていいから。それじゃ』

『じゃあな、千速』



待てよ。

いきなりどん底に突き落とされた息子より、仕事かよ。

お前等それでも親かよ。

なぁ。



俺は、何を支えに生きていけばいいんだよ──。





涙で滲む目が薄く開く。

頭はまだぼんやりとしていて、現実と夢の区別がイマイチつかない。



今俺が見てる世界は、外からの微かな光が差し込む夜明け前の薄暗い部屋に──誰かの、後ろ姿。



「……」



顔は見えない。

だけどその背中は、とても弱々しく見えて。



「巧く……やらなくちゃ」



遠くで、そんな声が聞こえる。

夢なのか、それとも現実なのか。

それすらわからぬまま、その声に耳を傾ける。