穏やかなこの空間を壊したくない。



「……千速くん、明日の朝はパンかご飯、どっちがいい?」

「……任せる。美生が決めて」

「じゃあ……パンにするね。茹で卵は好き?」

「……あぁ。固茹でより半熟の方が好き」

「ふふ、了解」



まるで、この場所だけ時間が遅くなったような。

今この世界には俺逹しかいないんじゃないかって、そんな馬鹿げたことを思うくらい、静かな空間。



「千速くん、文化祭はいつ?」

「16と17。……来る?」

「……行きたいけど……遠慮しとくよ。誰?なんて聞かれたら千速くん、答えづらいでしょ?」

「それは別に……」

「今日言ってた人がお家に来るときも、私どこかで時間潰してるから」

「……そんなの、お前に悪い」