《Kiko》





金曜日の朝は、次の日が休みだからか、週のなかで1番元気な朝。

だけど今日は違って、すごくもやもやしている。


昨日、莉子が帰ってくるはずだったのに、結局帰ってこなかった。
その理由をお母さんに聞こうとしても、お母さんは言葉をにごすだけ。



「ねえ、お母さん」

「なに?」

「莉子はどうしたの?」

「……希子、早くしないと遅刻するわよ~」



ほら、いまみたいにお母さんはあたしの言葉をうまく交わす。
いつもの呼び鈴が鳴るまであと2分。



「お母さん! あたしの質問に答えてよ!?」



荷物片手に、リビングにいるお母さんにそう言葉を投げかける。


お母さんはさっきと違って悲しい顔をしてあたしのことを見た。



「希子は、そのままでいてね」

「……お母さん?」