でも、わかったよ。

私はこの窓の外にある、葉のついていない桜の木に花がつくのを、見れるかわからないんだね。


それまでしか……生きられない、かもしれない。



「お母さん、私……受験するのやめていい?」

「どうして?」

「もし桜を見れるとしたら、そのときはそのときで考える」

「……わかったわ。 それで莉子が笑ってくれるなら、いいわ」

「ありがとう」



産んでくれてありがとう。
作ってでも、笑ってくれてありがとう。


気持ちを伝えられる時間は、まだあと少しある。
だからそれまでに、大切な人に大切な気持ちを、ちゃんと伝えるよ。



「お母さん、希子には内緒にしててね」



そう言うと、お母さんは驚いた顔をしたけど、うなずいてくれた。


大切な人のまえではずっと、〝いつもどおり〟でいたい。