「なあ、だれか数学得意なやついねえ? あ、芹沢は頭いいよな?」



そう言って、あたしたちのテーブルに来たのは、中田くんだった。



「あたし?」

「あれ、希子のほう?」

「……そうですけど!」



そう言うと、中田くんは『じゃあばかだな』とつぶやいた。余計なひとことだし!



「あ、芽依に聞きなよっ」

「はあ!? お、岡藤に!?」

「なんで私がこいつに……!!」



同じ反応をするふたりに、笑いが止まらない。
だけど、なんだかんだ言って、中田くんは芽依に問題を聞いている。



視線を手元に戻すと、なんだか図書館で勉強してるときを思い出して、胸がちょっと痛くなる。


———きっと、恋じゃなかった。

でも、周りの子たちが恋をしてるのを見ると、ちょっと羨ましく感じちゃう。