その笑顔に、なんだか胸の奥がうずうずする。 それはどこか、くすぐったくて。



「だな。 キコ、土日ちゃんと勉強してた?」



でも、『キコ』と呼ばれるたびに、胸はきしきしとした痛みに変わる。


だけど……そうしたのは自分。
『莉子だよ』って言いたいけど、それもいまさらで。



「キコ、どうかした?」

「……ううん! なんでもない!」



はぐらかすように笑うと、三吉くんは『そう?』と、きょとんとした顔をした。



「じゃあ、行くか」

「あっ、ちょっと待って……!!」



館内に入って行きそうな三吉くんの裾をぎゅっとつまむ。


すると、三吉くんは『ん?』と首をかしげながら、私のことを見下ろした。