「うん。 図書館で見かける男の子なんだけどね、気になってるくせに話しかけられない」

「希子が?」



ほらやっぱり、莉子は『有り得ない』とでも言いそうな顔をした。



うまく話しかけられないあたしと違って。
莉子はすぐに仲良くなれちゃうんだから、すごい。



「話しかけないまま、その人はもう現れなくなっちゃった」

「……そうなんだ。 なんか、意外だなあ」

「そう?」

「うん。 だって希子はなにに対しても積極的だから」



そう言って、莉子は柔らかく笑った。
……どうして同じ顔なのに、莉子の笑顔はあたしと違ってこんなにも優しいんだろう。



「希子は恋には奥手なんだね」

「こ、恋じゃないってば!」

「でも、そんな感じがするよ」



『ふふ』っと小さく笑う莉子。
なにか言い返そうとしたけど、そんな笑顔を見てやめた。